ニュースレター 95
[奨励賞④]高安定樹脂の資源循環を拓くケミカルリサイクル法の開発
著者:国立研究開発法人産業技術総合研究所 南 安規
有機資源の循環利用を担うプラスチックリサイクルは、今や世界的な取り組みである。我が国ではプラスチック資源循環戦略があり、この中で「2035年までにすべてのプラスチックの100%リユース・リサイクル等により有効利用」する目標を定めている。まさに、GSCが掲げる資源解決に直結する課題である。この目標達成に向けてあらゆるプラスチックのリサイクル技術が求められる。特に、材料を化学的に分解して原料再生・高価値化するケミカルリサイクルは、複合体を含むすべてのプラスチック材料に対応できる、3Rの根幹をなす技術である。
本研究では科学技術・産業への波及効果を見据えて、スーパーエンジニアリングプラスチックおよびエポキシ樹脂に代表される高安定プラスチックのケミカルリサイクルの開発に挑戦した。その結果、対象プラスチックの主鎖構造を踏まえた反応設計によって化学分解を進行させ、再原料化が実現できることを示した。本法は求核剤と塩基(触媒)、極性溶媒を適切に組み合わせ、熱分解と比べて低温での実施を特徴とする。たとえば、航空機構造部材に使用される高強度の炭素繊維強化ポリエーテルエーテルケトンからモノマー分子を得ることに成功し、炭素繊維を含む留分と分離回収できた。さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂とさまざまな硬化剤で作成したエポキシ硬化物の化学分解を制御し、エポキシ樹脂原料のビスフェノールAの高収率再生に成功した。炭素繊維強化エポキシ樹脂に適用すると、ビスフェノールの再生とともに炭素繊維の回収も可能である。
これらの成果は、標的とする高安定プラスチックの分子構造に基づく反応設計によって実現したもので、ケミカルリサイクルの大きく飛躍させると期待される。他の類似した合成法からなるプラスチックへの適用も期待でき、資源解決に向けて大きく貢献するものである。

