ニュースレター 95
[奨励賞②]海洋生分解性PA4真球粒子およびバイオ原料化技術の開発
著者:東レ株式会社 小宮 健、土田 紘也、児玉 篤樹、東原 武志、 松本 英樹
近年、マイクロプラスチックによって引き起こされる海洋環境問題が世界共通の課題として認識されており、化粧品等のライフサイエンス用途製品に含まれるマイクロプラスチックビーズ(MPB)の排出規制が各国で始まっている。東レはこの社会課題を受け、生分解性および海洋生分解性を有するポリアミド4(PA4)による代替を目指し研究開発に取り組んだ。
PA4は、溶融加工時に分解が進行する難加工性ポリマーであると知られているが、創業以来培ってきたポリアミド重合・分子構造制御技術を応用し、また独自の加工技術と掛け合わせることで、分解を抑制しつつ真球粒子化する技術を世界で初めて確立した(当社調べ)。粒子化条件の最適化により、試験条件下における安定した生分解性・海洋生分解性と、ライフサイエンス用途に求められる良好な官能特性を両立し、量産スケールでの実証にも成功した。
開発したPA4真球粒子は、活性汚泥中にて28日間で60%以上の生分解性を示し、また、海水中にて120日間で90%の生分解性を示すことから、MPB代替材料候補として期待できる。
一方、地球温暖化の抑制についても世界的な課題であり、化学品産業においてもCO₂等の温室効果ガス(GHG)の排出量削減や、枯渇資源である化石資源から持続可能資源への転換が強く求められている。
この課題に対して、東レではさらにPA4真球粒子の原料をバイオマス由来に転換する研究開発も進め、バイオマス由来化合物である4-アミノ酪酸を経てほぼ定量的に反応を進行させるとともに、化石資源由来同等の高純度でバイオ2-ピロリドンを製造する技術の確立にも成功した。さらに、化石資源を原料とする高温・高圧条件での従来の2-ピロリドン製造方法と比較し、本技術はマイルドな条件にて製造が可能となり、製造条件の観点からエネルギー消費低減の可能性が示唆された。
このように本技術は、世界初となるバイオマス由来原料から生分解性・海洋生分解性を兼備したPA4真球粒子の製造を可能としたものであり、MPB代替や枯渇資源への依存低減への貢献が期待され、持続可能な社会の実現に大きく寄与するものと考えられる。

