公益社団法人新化学技術推進協会(JACI)

ニュースレター 95

[奨励賞①]低温蒸気でCO₂を回収するアミン担持吸着剤プロセス


著者:川崎重工業株式会社 奥村 雄志、西部 祥平、田中 一雄、安原 克樹、真鍋 賢

 地球温暖化対策として、CO₂排出量の削減に加え、排出されたCO₂を分離・回収し、有効利用や貯留につなげる技術が求められている。川崎重工業では、従来のアミン水溶液を用いた吸収液法に代わる技術として、アミン担持吸着剤を用いたKCCシステムの開発を進めている。KCCは、吸着塔で排ガスや空気中のCO₂を選択的に吸着し、再生塔で低温蒸気を用いてCO₂を脱離・回収するプロセスである。約60℃の蒸気で再生できるため、工場や発電設備などで発生する比較的低温の未利用排熱を活用できる可能性があり、CO₂回収に必要なエネルギーの低減が期待される。
 本技術の基盤には、川崎重工業が1980年代から取り組んできた、宇宙船や閉鎖空間における呼気由来CO₂の除去技術がある。その後、燃焼排ガスからのCO₂分離回収技術へ展開し、固定層方式および移動層方式の試験設備を用いてプロセス開発を進めてきた。移動層方式では、アミン吸着剤を装置内で循環させながら、CO₂の吸着、脱離、乾燥を連続的に行う。連続運転に適しており、大規模化に向けたプロセスとして有望である一方、アミン吸着剤の搬送時に発生する破砕や粉化が課題であった。これに対し、アミン吸着剤の形状・材質や搬送設備を改良し、粉化量を97%低減することで、安定した循環運転に向けた技術課題を克服してきた。
 社会実装を見据えた実証も進めている。関西電力舞鶴発電所では、石炭火力発電所の燃焼排ガスを対象に、40トンCO₂/日規模のパイロットスケール実証試験を開始した。また、米国ワイオミング州のIntegrated Test Centerでは、実排ガスを用いたCO₂回収試験に加え、排気ガス中の微量揮発成分に関する環境影響評価を実施し、アミン吸着剤を用いるプロセスの環境面での検証を進めている。さらに、大気中の低濃度CO₂を直接回収するDirect Air Capture(DAC)にも展開し、明石工場の実証設備で1,000時間連続運転を達成している。
 KCCは、発電所や産業排ガスからのCO₂回収に加え、DACへの応用も可能な技術である。今後は、アミン吸着剤のさらなる高性能化、設備のモジュール化・低コスト化、さまざまな排出源への適用検討を進めることで、CO₂回収技術の実用化と適用拡大を図る。回収したCO₂の有効利用や炭素循環型社会の構築に向け、化学技術を基盤とした脱炭素化への貢献を目指していく。
図 アミン担持吸着剤を用いたKCCシステムの概要