公益社団法人新化学技術推進協会(JACI)

ニュースレター 95

「Chemistry for the Next Generation」
~まだ答えのない問いへの飽くなき挑戦~
第15回JACI/GSCシンポジウム開催報告


著者:JACIトピックス

■ シンポジウムの趣意
 第15回JACI/GSCシンポジウムが、2026年6月16日(火)から17日(水)の2日間にわたり、一橋大学・一橋講堂(東京都千代田区)にて対面とWeb配信のハイブリッド形式で開催されました。
 今回のテーマは「Chemistry for the Next Generation ~まだ答えのない問いへの飽くなき挑戦~」です。明確な答えのない問いに向き合い、その課題の輪郭を捉える柔軟な発想と、学際的なアプローチの重要性を共有する場を目指しました。
 梅雨の中休みとなった当日は清々しい晴天に恵まれ、産・官・学から集ったのべ1,330名(うち会場参加505名、オンライン参加825名)の多様な参加者が、未来を切り拓く挑戦者として一堂に会しました。

■ 1日目:新材料・新反応から社会的責任へ —— 科学の最前線に挑む
 初日の開会式では、JACI会長の森川宏平氏より、本シンポジウムに寄せる期待を交えたご挨拶をいただきました。
続いて、2025年度ノーベル化学賞受賞者である京都大学の北川進先生によるご講演 「“設計できる空間”が産業を変える ―MOFによる気体制御技術の可能性―」 が行われました。多孔性金属錯体(MOF)がこの25年以上にわたり、気体の貯蔵や分離、触媒、センシングなどの分野で次々と注目すべき成果を生み出してきた経緯と、気体から液体へと広がる研究対象の深化、そして人類共通の課題解決へ向けた革新性が力強く語られました。
その後、基礎科学から社会実装を見据えた最先端のご講演が展開されました。
 山中一郎先生(東京科学大学)からは、「化学プロセスの電化を目指した気相電解合成と電極触媒の開拓」について、カーボンニュートラル達成に不可欠な電極触媒の重要性をご解説いただきました。
 上垣外正己先生(名古屋大学)からは、「精密重合技術の開発と持続可能高分子材料への展開」について、高分子の構造制御とバイオベース・分解性ポリマーへの応用展望をご紹介いただきました。
 伊丹健一郎先生(理化学研究所)からは、「未踏炭素機能科学をめざして」と題し、分子ナノカーボン材料科学およびバイオロジーに向けた新たな挑戦についてご講演いただきました。
これらに加え、東京大学の藤垣裕子先生による 「科学者の社会的責任~次世代の化学のために」 と題したご講演が行われ、RRI(Responsible Research and Innovation)の概念を通じて、その技術が社会実装される現代における科学者の在り方を深く見つめ直す契機が提供されました。
 なお、1日目の後半では、第25回GSC賞の経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、環境大臣賞の受賞講演が行われ、奨励賞受賞者を併せた表彰式が執り行われました。式典の熱気はそのまま、初のケータリング方式が採用されたレセプション会場へと持ち込まれ、産官学の垣根を越えたカジュアルかつ熱い議論が交わされました。

■ 2日目:事業化・社会実装、そしてAIとの融合 —— 未来をデザインする
 2日目は、JACI事業統括部長の片岡正樹による事業説明からスタートしました。
 続くご講演では、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(株)の木場祥介先生より 「素材・化学産業からユニコーンを産むために 〜xRLによるシナリオ作り〜」 と題し、技術・ビジネス・人材・社会的ニーズの準備度を評価する新規指標(xRL)を用いた実践的な事業化アプローチが示されました。
 さらに、九州大学の三浦佳子先生からは 「多孔質高分子を利用した固定化触媒の開発」 について、柔軟な設計性と回収容易性を両立する最新のプロセス論をご解説いただきました。
 午後の注目企画として、スタートアップ3社を含む計8社による 「2分間プレゼン(ポスターパレード)」 が初実施され、会場の関心を引き付けました。それに続くEXHIBITION(ポスター発表155件、企業団体展示14団体)では、有益な議論や討議がなされ、会場の熱気は最高潮になりました。
ポスター賞には、132件のエントリーがあり、厳正な審査を経て16件がポスター賞を受賞しました。
 シンポジウムのフィナーレを飾ったのは、(株)Preferred Networks代表取締役社長の岡野原大輔氏と、住友電気工業(株)の髙桑達哉氏による対談形式のご講演 「AIは化学研究をどう変えるのか」 です。研究開発現場におけるAIシミュレーション活用の実際と課題、そして日本が果たすべき役割について本質的な議論が交わされ、会場全体が大きな刺激を受けました。
 最後に、JACI副会長 葛城俊哉氏による閉会の辞をもって、盛況のうちに幕を閉じました。

■ おわりに
 今回の2日間を通じて浮かび上がったのは、次世代の化学に求められているのが、単なる技術革新にとどまらないということです。新しい材料や反応を生み出す挑戦的なマインドに加え、それを社会へ届ける仕組み、異分野との協働、AIとの融合、そして未来を見据えた研究開発のあり方までが問われています。
 まだ答えのない問いに挑むすべての挑戦者たちが、ここでの出会いや議論を起点として新たな一歩を踏み出すこと。それこそが、本シンポジウムが果たした最大の意義であると言えます。
 次回「第16回JACI/GSCシンポジウム」は、2027年の開催を予定しております。さらなる飛躍を目指す次回の開催にも、引き続き多大なるご支援とご参加を賜りますようお願い申し上げます。
京都大学 北川 進先生
東京大学 藤垣 裕子先生
1日目レセプション
ニバーサル マテリアルズ インキュベーター(株) 木場 祥介先生
EXHIBITION_会場の様子
ポスター賞表彰式
(株)Preferred Networks_岡野原大輔氏と住友電気工業(株)_髙桑達哉氏