ニュースレター 94
循環型社会実現に向けて
著者:公益社団法人石油学会 会長 山口 康春
2020年のカーボンニュートラル宣言以降、世界的にさまざまな出来事が起こりました。人間は過去の苦い教訓を忘れ、強い自国主義の現れが戦争であるとしたなら悲しいことです。結果として、経済合理性、制度設計の必要性、社会受容性の点から、脱炭素社会の実現も後退の兆しがあらわれ、社会はより現実的な解を求めようとしています。
今後、我々に求められているのは、地球環境の保全、資源の持続可能な利用、そしてエネルギー安全保障の観点から、再生可能エネルギーの導入や資源の再利用といった課題に、知恵を提供し続けることです。
この議論の中であらためて認識されつつあるのが、炭化水素の持つ本質的な価値です。炭化水素は、高いエネルギー密度を持ち保存可能なエネルギー源であると同時に、化学品や素材の原料として、現代社会を支える不可欠な存在です。
幸いにも、わが国には、石油・石油化学産業を通じて長年にわたり培われてきた、世界に誇るべき高度なプロセス・触媒技術、EPC技術、装置運転技術、設備保全技術があります。これらの技術は、エネルギートランジションや循環型社会の構築においても、極めて有効に機能する貴重な資産です。その一方、再生可能エネルギーの導入や資源の再利用においては、地域の特性に応じた分散型・地産地消型の設備への移行も求められています。この変化は単なる設備のスケールダウンではなく、エネルギーと資源の流れそのものを再設計することを意味します。既存技術の延長線上にある一方、先進的な取り組みも必要であり、多様な立場の専門家が、現場と研究の垣根を越えて協働することが不可欠です。
学術・産業界の連携が、これまで以上に重要になる中で、共に知恵を出し合い、次代を切り拓く技術と人材を育み、社会に還元していく。その歩みを、公益社団法人 新化学技術推進協会の皆さまと共に進めてまいりたいと願っております。

