ニュースレター 93
素材産業の国際競争力の強化に向けて
著者:経済産業省 革新素材室長 山田 純市
現在、世界は大きな転換期を迎えています。保護主義の台頭やウクライナ侵攻の長期化等の地政学リスクの高まり、AI などの技術革新の加速、気候変動をはじめとした地球規模の課題に対する各国政府の関与の強まりなど、様々な構造的変化が生じています。
化学製品を含むマテリアルは、最終製品の構成物であるとともに、各種機能の源泉です。AI 技術、バイオテクノロジー、量子技術や、半導体、電池等といった国民生活の向上や複合的危機への対応に不可欠な重要技術領域において、素材分野の技術革新の寄与は極めて大きなものです。
このため、政府としましては、2025年6月に改定された政府の「マテリアル革新力強化戦略」においては、マテリアル分野において我が国が勝ち続けるために、①革新的マテリアルの研究開発・社会実装、②データ・AI等を活用したマテリアル・イノベーションの加速、③人材育成・研究環境整備等によるマテリアル・イノベーションの継続的な創出に取り組むことしております。
また、2026年夏に策定予定の成長戦略の検討においても、戦略分野の1つとして、「マテリアル(重要鉱物・部素材)」が設定されています。成長戦略は、リスクや社会課題に対し、先手を打った官民連携の戦略的投資を促進し、世界共通の課題解決に資する製品、サービス及びインフラを提供することにより、更なる我が国経済の成長の実現を目指すこととしています。
化学産業を含めた素材産業では、国内需要は人口減少などを背景に緩やかに減少傾向である一方、世界需要は引き続き伸長しており、国際競争力の重要性がより一層高まっています。他国との競争に打ち勝つためには、素材分野における研究開発の高度化と開発成果の早期事業化が必要であり、AIの活用や川下ユーザー産業との連携などが特に重要になってくると考えています。
新化学技術推進協会の活動に期待するとともに、皆様方のご知見やご意見をいただきながら、我が国素材産業の更なる発展に取り組んでまいりたいと思います

